2012年4月27日金曜日

世界にGO! 極細繊維で元気な中小企業 - 放送内容 - NHK総合


"世界へ飛躍する中小企業"こだわりの糸が夢を紡ぐ

世界一厳しい展示会!?連続参加の中小企業

おしゃれの国・イタリアで開催された"世界一出展が困難"と言われるニット製品の見本市「ピッティ・フィラーティ」。品質や独創性、会社の業績など、厳しい基準をクリアしたメーカーだけが出展を許されるこの見本市に、5年連続で参加が認められた日本の中小企業が、佐藤繊維です。5年前に開発した業界初の「極細モヘヤ糸」は、ファッション業界をあっと言わせました。今年、佐藤繊維は、わずか3日間の見本市で世界のトップブランド60社と、商談を成立させました。

元気な中小企業!極細モヘヤ糸☆開発秘話

人口4万の山形県寒河江市。戦後、東北地方のニット製造の要として栄えたこの町とその周辺には、今でも40ほどの繊維工場が軒を連ねます。その中の一つが「佐藤繊維」。従業員150人、創業79年の老舗メーカーです。4代目社長の佐藤正樹さんが入社した1992年当時の佐藤繊維は、大手のメーカーや商社の「下請け」を担っていました。しかし、すぐに繊維製品の価格が急落。国内の繊維産業は、人件費の安い中国や東南アジアへ工場を移してゆきました。


折り紙のカメを折るする方法

会社の生き残りをかけ、佐藤さんが掲げたのは「下請けからの脱却」。当時、ニットの市場では、カシミヤのセーターが「肌触りがよくて温かい」と、トレンドになっていましたが、佐藤さんたちはトレンドに乗るのではなく、あくまで「自分たちの作りたい糸」を追い求めました。目をつけたのは、モヘヤ。カシミヤに比べてモコモコしている印象はありますが、他の糸にはない独特の光沢があります。「極細のモヘヤ糸があれば、全く新しい製品ができる」佐藤さんたちの挑戦が始まりました。

8年前、佐藤さんは極細モヘヤ糸の材料を探すため、世界中を飛び回りました。毛糸の材料となる生き物は、飼育場所の気候や育て方によって毛並みが大きく変わります。佐藤さんは人づてに評判を聞いては、自らの目と手触りで確認。理想の毛並みを求めて、一軒一軒、農家を訪ね歩きました。そして6年前、ついに、南アフリカにある農村で探し求めていた「夢の材料」を見つけたのです。見たこともない細さと、光沢のある真っ白い毛。生まれて半年の「子どものアンゴラヤギの毛」でした。

しかし、極細モヘヤの開発は、簡単ではありませんでした。任されたのは、40年以上糸作りに携わってきた、槇正紀さん。普段使っている機械で伸ばしてみると...細い毛はすぐにちぎれてしまいました。そこで槇さんが目をつけたのは、昭和30年代に作られた古い機械。コンピューターで制御する今の機械と違い、歯車を微妙に調整することで、糸のより具合や、力加減を変えることができます。全国の同業者の元に残る古い機械を探しだし、安く譲り受けてもらっては、細さの限界に挑みました。


"私のカササギ鳥"

試行錯誤の末、一年かけてできあがった「極細モヘヤ糸」。次なる壁は「染色」でした。普通、糸を染めるには、機械に糸を取り付けて回しながら染料を吹きつけます。しかしこの方法で極細モヘヤを染めると糸が摩耗してしまい、製品になりません。困っていたところに名のりをあげたのは、近くの町の小さな染物工場、後藤染工でした。ここでも古い機械と職人のワザが光りました。昭和の中頃に使われていた古い染色機。染料が入った水槽の中に糸を沈めて色をつけると...糸を痛めずに染めることができました。

モノ作り☆新たなステージ 決め手は"人材"

佐藤さんは今、モノ作りの新たなステージに挑もうとしています。今年8月、東京渋谷にオープンさせたアンテナショップでは、工場で作った糸で洋服を作り、販売まで一貫して行っています。そして今、この「一貫したものづくり」を支える「人材の育成」に佐藤さんは力を入れています。世界に進出して以来、全国から「ここで働きたい」という若者が集まり、今では従業員の4割が20代の若者。佐藤さんはこうした若手の育成方法を、大きく見直しました。

これまで新入社員は、一度配属を決めたら、その部分の仕事を集中的に学ばせていましたが、生地を切る裁断や、仕上げを行うアイロンがけなど「すべての行程」を学ばせるようにしました。さらにイタリアの展示会にも連れて行きました。製造現場から販売まで、全てを体験させることで、新しいモノづくりの感覚が養われるといいます。さらに、ベテランたちの意識にも変化が。自分の与えられた仕事の枠を超えて、商品の提案をするようになったのです。"パートだけのモノづくり"ではなく"トータルとしてクリエイトできる"そんな人材づくりが進んでいます。


どのようにポッパーの花火

佐藤正樹さん(佐藤繊維 社長)

日本のモノづくりってすごい技術力だと思うんですね。だから、言われたものを作るんじゃなくて、自分から発信して、それを最終ブランドにして。それは大きい市場じゃなくても、小さいブランドでもいい。自分でブランドづくりをして、自分でマーケティングをして、自分でデザインして、自分で企画して、自分で販売する。"山形で作って世界をターゲットにビジネスする"というような、地方にはゼロからモノをつくる環境というのがまだたくさん残っていて、逆に言うと、それを自分たちでプロデュースすることによって、誰も作らないモノづくりができるのではないかと思います。

山田五郎さん(評論家)

僕は雑誌を作る仕事をしていたんですけども、本当にそのものをいいと思って紹介している記事と、まあ仕事だからって紹介している記事と、やっぱりね、違うんですよ。出ますよね。見る人が見れば、それは分かるし、説得力が違ってきますよね。それと同じだと思いますね。だから、全てを体験させるというのは大事だと思います。

山口義行さん(立教大学経済学部 教授)


今まで、地方のメーカーというのは中央で作るモノの分業として工場があるという感じで、そこから直接、世界に発信していく構造にはなっていなかった。この構造を変えていかないと、これからの地域再生というのは無理だと思うんですよね。そういう意味じゃ、まさに新しい時代の在り方のヒントのひとつになっているなという感じがしますね。

お問い合わせ先

「極細モヘヤ糸」を開発した会社
佐藤繊維 株式会社
  ホームページ: http://www.satoseni.com/

※極細モヘヤ糸は衣服の素材として扱われる業務用商品ですが、一般消費者向けに「手芸糸」としても販売されています。また、番組でご紹介した一般的な太さのモヘヤ糸のマフラー(ショール)と極細のモヘヤ糸のマフラーは、ともに佐藤繊維さんの商品です。オンラインショップや首都圏を中心に展開しているショップなどで購入できます。
詳細は、HPまたは会社に直接お問い合わせください。

※番組でご紹介した東京・渋谷のアンテナショップは...
「notre escalier(ノートルエスカリエ)」
ホームページ: 
今年8月に自社ビル「Torra della scala(トレ・デラスカラ)ビル」を東京・渋谷にオープン。ここは、佐藤繊維のオリジナルブランドの洋服や糸を販売するショップ「notre escalier(ノートルエスカリエ)」と、糸、アパレル、オリジナルブランドの営業を兼ねたオフィスとなっています。



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